生き抜くための理想的なフォルム
環境に適合するためのフォルム…etc
長い年月を経て遂げた進化の形があります。
INAX booklet【小さな骨の動物園】という本では
そんな進化の美としての動物の骨格を見る事が出来ます。
全身の骨格標本であれば生存時の姿や習性を想像出来ますし
頭骨だけでもその形状だけではなく、目の位置や向きなどを
その動物の生活環境と照合しながら見ると大変面白く
個人的にはモグラの骨格などはとても興味深かったです。
またヒトヅラハリセンボンの頭骨は(ヒトヅラというよりも)
河童のように見えてしまい、とても愛らしかったです。
作品の制作上、未だ克服出来ていないとある動物も
骨格に関してのみは直ぐに受け入れる事が出来ました。
ちょうど去年の今頃でしたでしょうか…
三井記念美術館で開催された、幕末から明治にかけて活躍した漆芸家:柴田是真の展覧会に出掛けた際に図録代わりに購入した本が【別冊太陽 柴田是真】です。
(個人的に)図録ではなく、こちらを購入したのは
王子稲荷神社に奉納されている「鬼女図額面」という
板に描かれた絵画が取り上げられていた点に尽きます。
漆芸家より先に絵師としての評価を得たというだけに
鬼女が逃げ去る瞬間(振り返る姿)を捉えた構図には
まるで真蛇のような迫力ある形相で威嚇しながらも
どこか達成感のようなものを読み取る事が出来ます。
勿論、漆芸家としての偉業はここに書くまでも無く
春景・秋景の2枚の替蓋のある重箱での「青海波塗」、
紙に「紫檀塗」という技法を用いた騙し絵や
竹に漆塗を施した肩衝茶入の騙し漆器など
変塗(かわりぬり)を用いたユニークな作品と
その技法に関する記事なども大変興味深いです。
二十年に一度の造替という、他に例のない伝統保存により
『唯一神明造』と呼ばれる(掘立柱に萱の屋根が特徴で
他の神社で使う事が許されない)独自の建築様式は
弥生時代における高度な建築物の姿(原形)を今に伝える
神宮の永遠性を実現する大いなる営みとされています。
第六十一回式年遷宮記念(1993年)に合わせて
『伊勢神宮』が特集された月刊太陽(平凡社)では
(通常は写真や映像などでも見る事が出来ない)
「内宮正殿」が一部公開されています。。。
進化は全てにおいて要するものではなく
そこには忠実なる伝統の継承によって
正統に保持されるものがあります。
くりから工房を始めて直ぐの頃に購入した
【日本・中国の文様事典】という図録集です。
色々な文様がランダムに掲載されている図録集は
それまでにも2冊ほど所有していたのですが
この図録集は、モチーフごとに明快な説明が添えられており
掲載されている文様よりも、イメージを膨らませる為の
ストーリー作りとして主に活用させて頂いています。
もう10年以上手元にありますが、その時々の興味に対して
多くの導きを示してくれた入口の1つであります。。。
最新作の『迎え兎』のキーワードにある「花兎」も
この文様事典の中で見つけたワードの1つです☆
本日紹介する本は1969年(昭和44年)に出版された
毛利登氏:著【図鑑 日本の文様美術】という図録集です。
この図録集は、平安時代後期に至って完成をみたとされる
日本独自の和風化した文様が、縄文時代から江戸時代までの
時代ごとに配列されているので、1つの文様が形成されるまでの
経過や変換などを時代ごとに追うように見る事が出来ます。
かつて、こういった図録集を参考に見る際などは
文様そのものを断片的、部分的のみに捉えていましたが
そもそも文様のみが単独で存在する事はあり得ない事であり
文様が施されている主体との関連を考えるきっかけとなりました。
想作作業中に流れているBGM集の中から
一番最初に手にしたフュージョン系のアルバム
モーガン・フィッシャー氏【リ・バランス】を紹介します。
未だ日本でヒーリングミュージックというジャンルが
あまり浸透していなかった20代の中頃(1995年頃)
ロック→ブルース→ワールドミュージックの流れの先に
何故か必然的に辿り着いたのがこの作品でした。。。
「エネルギーが蓄積されてゆくような感覚を覚えた時に
感じられる音楽」という存在を知り、永く愛聴しています。
音の潮流に邪念が取り払われ「無」へと誘ない
広がる音に清らかに包まれるような感覚は
ひょっとしたら母体に身を預けていた頃のような
居心地の良い温かい感覚に近いかもしれません。
【メモ】
Functional Musicとは・・・
音楽には心身の状態を一定の方向に導く働きがあります。
ファンクショナル・ミュージックとは、この特性を
最大限に引き出すように作られた音楽です。
(1994年盤:帯より抜粋)
昨日に続き、もう1冊池田さんの本を紹介しておきます。
池田重子氏:著【美の世界】
数年前、御縁があって池田さんとお会いした日に
御同行して下さった方から頂いた本です。
池田さんは宝石の中では翡翠が最もお好きだそうで
お会いした日も大きな翡翠の指輪を着けておられ
指輪を着けた手を差し出して見せて下さいましたが
この本の中に「翡翠のコレクション」も掲載されています。
取材時の池田さんの言葉が忠実に本に掲載されているようで
お会いした時に話して下さった事も多くありました。
【メモ】
池田さんにとっての「美」とは…
粋が過ぎると下品になり、はんなりが過ぎると野暮になる。
そのギリギリの線を見極めて、断崖絶壁を歩く時のような
危なっかしいものは、人の心を魅了する力があります。
(池田重子の「美」を知るより抜粋)
くりから工房で帯留を取り扱い販売するようになった翌年に
とても美しい本が発売され、勉強させ頂いております。
池田重子氏:著【日本のおしゃれ 帯留―池田重子コレクション】
池田さんの帯留コレクションがアールヌーヴォー・アールデコから始まり
木彫、漆芸、象牙、彫金、硝子、鼈甲などの項目ごとに掲載されており
非常に見やすく、気品あふれる本としてまとめられています。。。
特に刀装具の彫金職人師方が、廃刀令の布告と共に
帯留などの装身具の制作に新たな活動を見出した品々は
日本人の大らかさとキメ細やかさが見事に反映されており
掲載されている作品を眺めているだけで心が彩れらます☆
「あらゆるものには意味がある」
くりから工房を始める前の20代半ば頃
そんな事を教えてくれた本と出逢いました。
J・C・クーパー氏:著【世界シンボル辞典】
新作を制作するにあたり、そのイメージ作りに活用したり
オーダーメイドでこちらから御提案させて頂くような時
御依頼主様にちなんだシンボルを探し出す際に使用したりと
くりから工房においても随分お世話になっている本です☆
言葉遊びのように、関連するシンボルがめくるめく展開し
1つのシンボルに辿り着いた時は必然性を感じると共に
絶対的な自信を持って御提案させて頂いております。
【メモ】
シンボル体系とは認識の道具であり
最も古く、かつ根源的な表現様式であって
それ自体は媒介的なものであるが
これを通して直接的理解に到達できる。
(箱書きより抜粋)
昨日ヴンダーカンマーというワードが出ましたが
日常ではあまり聞き慣れないワードかもしれません。
そんな博物館や美術館の前身とも言える
収集家の珍奇な蒐集品が展示された陳列室と
奇妙でストーリー性あふれる品々について
記されている本がありますので紹介しておきます。
小宮正安氏:著【愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎】
特に奇妙な「妖かし」の品々に惹かれる者として
脈絡も無くただ雑然と展示されているそれは
幼少期から蒐集癖が身に覚えにあるだけに
この本には「自身の心当たり」がくすぐられました。