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クリムト展~ウィーンと日本 1990@東京都美術館 | 2019-05-29

クリムト展~ウィーンと日本 1990を上野の東京都美術館にて観覧してきました。

没後100年を記念する今回のクリムト展は
過去最大級のという事で楽しみにしていました。

理想の女性(像)を追い求めるかのように
ゆるやかにたわむ線は、胸の膨らみから
下腹部へと流れ、その存在を写し表す。

そして時に物憂げに、時に匂い立つほど恍惚に
その官能性と甘美を醸し出す黄金様式時代の表情も
未だスタイルを手探りしているかであろう
修行時代の劇場装飾の下描きで既に見て取れる。

例えば、まるで日本の天女の姿のように描かれた
「浮く女性」はその将来への繋がりが思い浮かぶし
「古代ギリシャⅠ・Ⅱ」で描かれていた女性の顔は
その20年後に発表された「ユディトⅠ」の
恍惚とした表情が秘められているようだった。

ユディトⅠ

ユディトⅠ

今展チケットやフライヤーの表紙に採用された「ユディトⅠ」。

アッシリア軍に包囲され壊滅寸前だった我が町を救うために
敵将ホロフェルネスを誘惑して酒に酔わせ、その首を取った。

そんなユダヤの英雄ユディトは、クリムトによって半裸の姿で
その恍惚とした表情と、金箔と共に華やかな装飾で表され
英雄を絢爛な姿で称えた…「黄金様式」の始まりである。

そして今回が初の来日となった「女の三世代」は
幼い娘を寄り添うように抱く母親の傍で
老いを嘆いているような姿で老婆が佇む
女性の人生の三段階(幼年、青年、老年)である。

女の三世代

女の三世代

背景の曜変天目茶碗の内側にあるような大小の斑文や
鱗紋のような模様で埋め尽くした抽象的な空間は
まるで生命の円環=宇宙を表しているかのようです。

伝統的な西洋美術の表現の1つで
鏡を持った裸の女性は真実を表す。

全てを映し出す鏡と露わとなった裸体を
組み合わせることで隠し事のない意となる。

ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)

ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)

このヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)も
その伝統を踏襲しているようにも見えるが
造形芸術家協会に対する不満、そして脱退し
新たに分離派を結成したという背景からして
批判や圧力に屈しない反骨の狼煙として
その鏡には保守的な協会の姿を映し込んで
あざ笑っているかのようにも見える。

上部に書き込まれているシラーの警句はこうだ。

 君の行いと芸術で万人を喜ばせられなくても
 ごく一部の理解者を喜ばせることだ。
 誰彼構わず喜ばせるのはむしろ見苦しい。

…と、芸術が大衆に媚びる様であってはならないとする。

足元の蛇は罪を暗示しているとあったが
それは果たしてどうだろう…?

クリムトの作品には多くの蛇が登場する。
それは蛇そのものの姿だけに留まらず
蛇の姿をデフォルメ、あるいは簡素化した
柔らかな曲線や曲線模様として表されたり
鱗もまた同じように意匠化され描かれている。

ゴルゴン三姉妹

ゴルゴン三姉妹

ベートーヴェンの交響曲第9番をテーマに描かれた
黄金時代の集大成「ベートーヴェン・フリーズ」でも
甲冑姿の「黄金の騎士」の背景には丸に三つ鱗紋
ゴルゴン三姉妹の頭に蛇が纏わり付くように描かれている。
※正三角形を組み合わせた「三つ鱗」は
蛇の鱗の連なりに似ていることに由来する。

水蛇Ⅰ

水蛇Ⅰ

今展は残念ながら水蛇ⅠとⅡの2作品はありませんでしたが
勿論この2作品とも蛇が重要なテーマになっている。

「クリムトと蛇」については後日改めて考察したい。

水蛇Ⅱ

水蛇Ⅱ

本展とは別に都美館の売店でポストカードが販売されていたので
その2作品と水蛇Ⅰに装飾が施されたカードを記念に購入しました。

5年前に観た映画「クリムト~Klimt」では
病院のベットに横たわる臨終間近のクリムトの
夢とも幻覚ともおぼつかない世界が描かれていたが
今改めてDVDを引っ張り出して観てみたいと思う。
きっとあの頃とは少し違う発見が出来るかもしれない。

~・~・~・~・~・~・~・

会場:東京都美術館
会期:2019年7月10日(水)まで

クリムト展~ウィーンと日本 1990

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