くりから工房~Blog (Archive & Search)

伝説の面打たち~東京国立博物館

2020-02-22
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まだまだ実態が解明されていない事が多いとされる面打にスポットを当てた「伝説の面打たち」を観覧してきました。

先ず最初に出迎えてくれたのが「伝山姥」伝赤鶴作
南北朝時代に制作され重要文化財に指定されています。

山姥の面にしては珍しく耳が存在するこの面は
その大きく裂かれた口に歯茎まで表すことで
より独特な凄みの表情が表現されています。

鬼の面の上手(鬼の面に優れた)
赤鶴(しゃくづる)作とされます。

次は室町時代に制作された「大癋見」
佐渡嶋/一透作/久知住 刻銘

癋見(べしみ)とは下あごに力を入れ
口をぐっと結んだ表情の鬼神面のことで
大癋見は目を見開いた大形の癋面。

この大癋見はそのぐっと結んだ口の上下が
力強く膨らんでいるのも大きな特徴です。

一透(いっとう)は赤鶴の別名という説もあるそうです。

次は「鼻瘤悪尉(はなこぶあくじょう)」

文蔵作/満昆(花押)とありますが、これは
江戸時代の面打である出目満昆による鑑定銘。

悪尉とは恐ろしい表情をした尉(老翁)の面で
額に浮かび上がる血管も稲妻のように力強い。

「茗荷悪尉(みょうがあくじょう)」
文蔵作/満昆(花押)室町~安土桃山時代

頬骨を細く鋭く突起するように彫られており
茗荷のような形の眼に耳は表さないのが特徴。
人間を超越した存在(異形の神)に用いられる。

こちらも同じ「茗荷悪尉」
春若作/満喬(花押)室町~安土桃山時代

こちらは先程の茗荷悪尉のような
抽象的・デフォルメ的な表現は控えめで
鑿跡のない滑らかな印象の仕上がりです。

最後に「増髪女(十寸髪) 」
増阿弥作/満昆(花押)/満猶(花押)

眉間にある左右二筋ずつの皺とその上の大きな窪み
そして乱れた髪は神がかった状態を表しているとされる。

たくさんの女面の中で特に気に入った面でしたので
角度によって異なる表情をInstagramに載せておきました。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・
会場:東京国立博物館 本館14室
会期:2020年1月2日(木) ~ 2020年2月24日(月)
伝説の面打たち


特別展「人、神、自然~ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界」

2020-01-30
特別展「人、神、自然~ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界」 はコメントを受け付けていません

特別展「人、神、自然~ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界」を観覧してきました。

カタール国の王族ザ・アール・サーニ殿下が収集された
世界各地の古代文化が生み出した工芸品コレクションから
「人」「神」「自然」をテーマに沿って古代世界を巡る。

古代の人々は、神々や死後の世界をどのように捉え
自分達をどう表現し、自然界をどう認識していたのか
古代の美術工芸品に投影された図像・意匠などから
当時の人々の意識や世界観の断片を窺い知ることが出来る。

2匹の蛇が左右対称に並ぶように絡み合い
その先端は2匹の蛇の頭部は向き合っている。
ハート形と丸形の石(ターコイズ?)の痕跡と
尾の部分にはドロップ形の痕跡が残っている。

古代より蛇を模した装身具は手首や上腕に装着され
幸運や愛を表すモチーフが用いられたとされる。

蛇は地中で冬眠することから再生の象徴とされ
その邪悪で時に致命的な危険をもたらす事から
護符とされ、豊穣をもたらすと考えられていた。

水や豊穣に関連するゾロアスター教の女神アナーヒター

この女神は「水を持つ者、湿潤にして力強き者」と呼ばれ
ハラフワティー・アルドウィー・スーラーという別名があり
ハラフワティーはサラスヴァティーのペルシア語読みとされ
インド神話のサラスヴァティーと同起源と考えられている。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・
会場:東京国立博物館 東洋館
会期:2019年11月6日(水) ~ 2020年2月9日(日)
特別展「人、神、自然~ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界」


くりから工房2020年~子年

2020-01-01
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喪中につき新年の挨拶を控えさせて頂いておりますが、引き続き本年も宜しくお願い申し上げます。

昨年、御二方との大きな別れがありました。
くりから工房スタートさせた当初から
私の仕事を信じ、応援して下さった方々です。


御依頼主様の干支(子)の守り本尊
「千手観音菩薩」の梵字『キリーク』を
印面にシンボリックに彫り込んだ18金の指輪。


細めのデザインを好まれる御依頼主様より
お預かりした両穴(貫通)の大きな黒真珠を
地金で挟み込むように留めたプラチナの指輪。

どちらも思い出深い作品である事を胸に秘め
御二方からお寄せ頂いた期待に応えるべく
これからも真摯に想作に向き合って参ります。

~・~・~・~・~・~・

梅が丘付近から綺麗に富士山が見えるスポットがあります。

今こそ世の中のますます繁栄していくのを見るとき
御神慮の大きく限りなきことを知り得る。
いよいよ慎みて家業に精を出し御神徳を頂けとなり。

本日は月齢 5.9
力強く満ちてゆく月姿は
元旦に相応しく感じます。

~・~・~・~・~・~・

2008年にスタートさせた干支シリーズが一回りした今年
12年を経て見えてきた佳き所、改めるべき所を見直した
2020年バージョンの子年の干支をリリース致します。

作品名『大黒の子(ね)』

心を豊かにしてくれる金嚢を運ぶ頬っ冠り姿の大黒の遣い。
金嚢は福労、つまり積み重ねた苦労も福と成すとされ
その中には金銀財宝といった物質的な宝よりも
智慧から授かる捉え方、大切な価値観かもしれません。

改めまして2020年も、くりから工房を宜しくお願い致します。


企画展「有栖川宮家・高松宮家ゆかりの新収蔵品」~國學院大學博物館

2019-10-24
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國學院大學博物館にて開催中の企画展「有栖川宮家・高松宮家ゆかりの新収蔵品」を観覧してきました。

お目当ては金工職人の技術が駆使された
精巧かつ美術的な側面でも価値のある
両宮家伝来のボンボニエールです。

様々な意匠が凝らされたボンボニエールは
手の平サイズに浮かびあがる宇宙という面でも
まるで根付にも通じるような雅な芸術品ですね。

ボンボニールとは…
ヨーロッパでお祝いの場に添えられる
砂糖菓子(ボンボン)を入れる菓子器で
日本では明治時代より皇室の慶事の際に
引き出物として配られるようになりました。

いくつも面白い意匠のボンボニエールがありましたが
この場では中でも最も「らしくないもの」という点で
『楊筥垂纓冠形ボンボニエール』をフォーカスします。

楊筥垂纓冠形ボンボニエール

楊筥垂纓冠形ボンボニエール

御紋:三笠宮家
崇仁親王(三笠宮)御成年式御祝宴
昭和10年12月15日

こちら、どこからどう見ても…

ボンボニエールには見えませんね。

いったい、どこにどれだけの砂糖菓子が
収納されるというのでしょう???
一方で、そんな思いを払拭してくれる程の
仕事のバランス感に惹かれました。

楊筥垂纓冠の打ち出し模様の表現も
マットな黒鉄色の金属肌を巧く活用し
やり過ぎ感のない程よい感じが良いですね。

最後にもうひとつ…
『兎置物形松鶴文ボンボニエール』
御紋:久邇宮家
久邇宮良子女王御婚儀御送別
大正13年1月19日

とても精巧な造型のうさぎさん、
香淳皇后陛下の干支は卯ですね。

他にも気になったもの等をいくつか
インスタグラムの方にアップしておきます。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・
会場:國學院大學博物館 企画展示室
会期:令和元(2019)年8月31日(土)~10月27日(日)

企画展「有栖川宮家・高松宮家ゆかりの新収蔵品」


みんなのミュシャ「ミュシャからマンガへ―線の魔術」

2019-09-21
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みんなのミュシャ「ミュシャからマンガへ―線の魔術」をBunkamura ザ・ミュージアムにて観覧してきました。

ミュシャに関する展覧会は2010年の6月に三鷹で観覧した
生誕150年記念「アルフォンス・ミュシャ展」以来です。

【後世への影響を辿る】
いわゆる華やかな「ミュシャ様式」は現代に至るまで
様々なジャンルのアーティストの作品に繋がれており
本展ではその在り方も深く掘り下げた内容になっている。

例えばそれは明治期の文芸誌の挿絵から
1960年代後期のサイケデリックアートまで
個人的にも身近にあったグラフィックである。

こちらでは昨今話題の「体験消費」への対応でしょうか
撮影可能だったエリアから気になった作品を紹介します。

~・~・~・~・~・~・~・

【ミュシャと蛇】

アルフォンス・ミュシャ《エメラルド》

アルフォンス・ミュシャ《エメラルド》


個人的には「ミュシャの描く蛇」に興味を寄せている。
その辺りについては改めて別の機会を設けたいと思います。

サブタイトルにある「線の魔術」そのままに
その流れるような曲線から織り成される装飾として

『鏡によって無限に変化する装飾モチーフ』の中では
ミュシャの描く蛇のシルエットのように浮かび上がります。

アルフォンス・ミュシャ《絵画/四芸術》

アルフォンス・ミュシャ《絵画/四芸術》

背景の円と人物とでQの字を描く「Q型方式」で
後に多くのアーティストに取り入れられたとされます。

この四芸術の絵画を擬人化させた女性像の背景にある
小さく連なる円もまた個人的には蛇をイメージさせる。

アルフォンス・ミュシャ《黄道十二宮》

アルフォンス・ミュシャ《黄道十二宮》

こちらは「守護天使リング」の制作時
資料としても活用させて頂いた思い入れのある作品。

カレンダーとして考案されたミュシャ様式の代表作の1つ。
背景の丸く縁取られた中に12星座が描かれています。

アルフォンス・ミュシャ《夢想》

アルフォンス・ミュシャ《夢想》

こちらも背景の花で飾られた円と人物とでQの字を描く
「Q型方式」のひとつであろうか…。

元々は某印刷所のノベルティとして制作されだけあって
モデルの膝の上には印刷物が大きく広げられている。

守護天使の資料に《黄道十二宮》を用いたように
今もしミュシャの作品を模写するとしたら
迷うことなくこの《夢想》を選ぶと思う。

そんな模写等に役立てられるのが次の作品です。

『装飾人物集図』26の最終習作

『装飾人物集図』26の最終習作

こちらは装飾人物の習作で、ミュシャの絶頂期に
学生・デザイナー・イラストレーターらの要望に応え
刊行された『装飾人物集』の中に収められている。

そして大変ありがたいことに(しかも大変お手頃な価格で)
ミュシャ装飾デザイン集―『装飾資料集』『装飾人物集』として
この貴重な2冊が1冊にまとめられリリースされています。

なかなか模写したりするまでには至っておりませんが
秋の夜長に何となくページをめくるだけで心豊かなひと時です。

~・~・~・~・~・~・~・

会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:2019年9月29日(日)まで

みんなのミュシャ「ミュシャからマンガへ―線の魔術」


ワンダーフェスティバル(ワンフェス)2019~夏

2019-07-31
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ワンダーフェスティバル(ワンフェス)2019~夏に市場調査と参加されてる作家さんの応援も兼ねて幕張メッセまで出かけて参りました。

前々から気になってはいたものの
その市場の大きさと入場者数に尻込みし
ずいぶん長らく気後れしておりました。

プロフェッショナルからアマチュアまで
分業から自己完結(セル生産方式)まで
驚愕から仰天まで…と刺激を受けました。

様々なものが溢れる中でふと立ち止まって
カメラを向けたのが日本が世界に誇る名車
ホンダ「スーパーカブ」のミニチュアでした。

AOSHIMA HONDA SUPER CUB 1/12 SCALE

スーパーカブの素晴らしいところは
60年以上を経ても原設計を引き継ぎつつ
改良を重ねながら生産され続けている事と
その汎用性の高さと豊かさに尽きます。

世の中のプロダクトデザインの中で
個人的にはベスト1だと思っています。

今年になってからも、アウトドアテイスト溢れる「クロスカブ」や
特別なカラーリングが施された「スーパーカブ・ストリート」など
コレクションしたくなるような(出来ませんが)心くすぐられます。

汎用性の高さといえば、ウルトラマンもまた凄い事になってます。

ウルトラマンの因子を持つ人間のみが使用できる
ウルトラマンに酷似した形状のパワードスーツの
バリエーションで、その通称はセブンスーツ。
ULTRAMAN SUIT Ver7

この未来感あふれる隙の無さというか
昭和のセブン・ファンとしては仰天しつつも
決して邪道などと排せず、気に留めておきます。

そして今回のメインである御高名な根付師さんが
「TUKU」名義で発表されてる作品。

「くっく」(河童) のガレージキット

この河童さんの頭部をそのまま削りだした
河童の頭骨のガレージキットを即購入。

ガレキの彩色等は全くのド素人ですが
今年の秋の夜長にでも遊んでみようと思います。

いつか完成したらTUKUさんに感想を頂きたいなぁ。

「ビット」(うさぎ)のガレージキット

こちらは「うさフェス」用に購入させて頂きました。
彩色は相棒に任せますが、上の画像とはまた違った
世界観を表現出来ればいいなぁと思っています。

敢えて名は伏せますが、御高名な根付師さんなので
その美術品クラスの根付はとても手が届きませんが
ガレージキットという形で手にすることが出来て
ようやくお近づきになれました(…でしょうか)。

他にもたくさんの作家さんの名刺を頂いてきました。
何よりあの巨大な市場で既に挑戦されている事が素晴らしいです。

閉塞感が長きに渡って漂う日本の経済ですが
趣向系の高いマーケットは強さと勢いがあります。

よい刺激、そしてよい勉強になりました。


大橋隆志(JAIL大橋)ギタークリニック & エフェクターセミナー

2019-06-29
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大橋隆志(JAIL大橋)ギタークリニック & エフェクターセミナーに参加してきました。

ここ数年参加出来ずにいたギタクリ…
前回は確か3年半前の松戸の時でした。

Psycholdの制作で超々多忙だったあの時期でしたが
睡眠時間を削りに削って何としても作りたかったもの。

聖飢魔IIの武道館ミサで着用して頂く為に
あの日の午前中に出来上がったばかりの
某品のプロトタイプを携えて気分も最高潮☆

あれからあっという間に時は流れてしまいましたが
何ひとつ色褪せず今日に至っている気がします。

そんな変わらぬ想いの中で過ごした3年半…

まるで何かで繋がれていた続きのように
アダムの林檎で始まり胸元の‘Shield’ペンダント
そして左腕に巻かれたPsycholdブレスレット
パラレルに反応し鼓舞するという至福のひととき♪

今回演奏された曲はADAM’S APPLEの他に
Universal Flower、そして FROM HELL WITH LOVE!

ARIA PRO-II RS WARRIOR JAIL

ARIA PRO-II RS WARRIOR JAIL

会場には伝説の2機も展示されていました。

ARIA PRO-II RS JAIL BLUE

ARIA PRO-II RS JAIL BLUE

断片的なフレーズでオマージュを表しながらも
ギターのスタイルもエフェクターの使い方も
遊びでやってる自分のスタイルとは全く違いますが
その全てに通じ重なるところがあるように思えます。

それが My Guitar Hero Takashi O’hashi なのだから♪



こちらは2017年の12月初旬…
Takashi O’hashi Playing Guitars’ Exhibition
打ち合わせがてらIkeBECKさんに伺った時のもの♪

この頃は大変な事態(すっぱいレモン)に見舞われながらも
その僅か1ヶ月後、見事なレモネードがお披露目されました。

Stephen Mills said…
When life gives you lemons, make lemonade.

「転んでもただでは起きない」「災い転じて福となす」
どんな逆境に追いやられてもベストを尽くすことで
不遇な試練を巧く活用する術が見事に証明されました。

そう、大橋さんは必ず証明してくれる。

Takashi O’hashi & Stephen Mills
Independent Souls Union Live

その証明の軌跡が音源として収録されています。

こちらは発売日前夜に訪れたタワーレコード新宿店
その一角にて大々的な特集コーナーが設置されており
長文のリコメンドにも愛を感じつつ悦しくなりました♪



Takashi O’hashi Playing Guitars’ Exhibitionにて
飾られていたお気に入りの写真の1枚ですが
対面のギター群が移り込むように撮れたのが◎

今回のギタクリでは‘Shield’ペンダントを着用されていました。
大橋さんの専属カメラマンの安田さん御夫妻(I&N YASUDA)が
ツイッターにて写真をアップして下さっています

T.O.ジュエリーも次回は第3弾という事になりますが
実現に向け着々と準備しながら可能性を探っています☆

久々のギタクリについて書こうと思っていたら
あれもこれもと支離滅裂になってしまいましたが
単なるT.O.フォロワーである事に違いはありません(=`ェ´=)ゞ


クリムト展~ウィーンと日本 1990@東京都美術館

2019-05-29
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クリムト展~ウィーンと日本 1990を上野の東京都美術館にて観覧してきました。

没後100年を記念する今回のクリムト展は
過去最大級のという事で楽しみにしていました。

理想の女性(像)を追い求めるかのように
ゆるやかにたわむ線は、胸の膨らみから
下腹部へと流れ、その存在を写し表す。

そして時に物憂げに、時に匂い立つほど恍惚に
その官能性と甘美を醸し出す黄金様式時代の表情も
未だスタイルを手探りしているかであろう
修行時代の劇場装飾の下描きで既に見て取れる。

例えば、まるで日本の天女の姿のように描かれた
「浮く女性」はその将来への繋がりが思い浮かぶし
「古代ギリシャⅠ・Ⅱ」で描かれていた女性の顔は
その20年後に発表された「ユディトⅠ」の
恍惚とした表情が秘められているようだった。

ユディトⅠ

ユディトⅠ

今展チケットやフライヤーの表紙に採用された「ユディトⅠ」。

アッシリア軍に包囲され壊滅寸前だった我が町を救うために
敵将ホロフェルネスを誘惑して酒に酔わせ、その首を取った。

そんなユダヤの英雄ユディトは、クリムトによって半裸の姿で
その恍惚とした表情と、金箔と共に華やかな装飾で表され
英雄を絢爛な姿で称えた…「黄金様式」の始まりである。

そして今回が初の来日となった「女の三世代」は
幼い娘を寄り添うように抱く母親の傍で
老いを嘆いているような姿で老婆が佇む
女性の人生の三段階(幼年、青年、老年)である。

女の三世代

女の三世代

背景の曜変天目茶碗の内側にあるような大小の斑文や
鱗紋のような模様で埋め尽くした抽象的な空間は
まるで生命の円環=宇宙を表しているかのようです。

伝統的な西洋美術の表現の1つで
鏡を持った裸の女性は真実を表す。

全てを映し出す鏡と露わとなった裸体を
組み合わせることで隠し事のない意となる。

ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)

ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)

このヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)も
その伝統を踏襲しているようにも見えるが
造形芸術家協会に対する不満、そして脱退し
新たに分離派を結成したという背景からして
批判や圧力に屈しない反骨の狼煙として
その鏡には保守的な協会の姿を映し込んで
あざ笑っているかのようにも見える。

上部に書き込まれているシラーの警句はこうだ。

 君の行いと芸術で万人を喜ばせられなくても
 ごく一部の理解者を喜ばせることだ。
 誰彼構わず喜ばせるのはむしろ見苦しい。

…と、芸術が大衆に媚びる様であってはならないとする。

足元の蛇は罪を暗示しているとあったが
それは果たしてどうだろう…?

クリムトの作品には多くの蛇が登場する。
それは蛇そのものの姿だけに留まらず
蛇の姿をデフォルメ、あるいは簡素化した
柔らかな曲線や曲線模様として表されたり
鱗もまた同じように意匠化され描かれている。

ゴルゴン三姉妹

ゴルゴン三姉妹

ベートーヴェンの交響曲第9番をテーマに描かれた
黄金時代の集大成「ベートーヴェン・フリーズ」でも
甲冑姿の「黄金の騎士」の背景には丸に三つ鱗紋
ゴルゴン三姉妹の頭に蛇が纏わり付くように描かれている。
※正三角形を組み合わせた「三つ鱗」は
蛇の鱗の連なりに似ていることに由来する。

水蛇Ⅰ

水蛇Ⅰ

今展は残念ながら水蛇ⅠとⅡの2作品はありませんでしたが
勿論この2作品とも蛇が重要なテーマになっている。

「クリムトと蛇」については後日改めて考察したい。

水蛇Ⅱ

水蛇Ⅱ

本展とは別に都美館の売店でポストカードが販売されていたので
その2作品と水蛇Ⅰに装飾が施されたカードを記念に購入しました。

5年前に観た映画「クリムト~Klimt」では
病院のベットに横たわる臨終間近のクリムトの
夢とも幻覚ともおぼつかない世界が描かれていたが
今改めてDVDを引っ張り出して観てみたいと思う。
きっとあの頃とは少し違う発見が出来るかもしれない。

~・~・~・~・~・~・~・

会場:東京都美術館
会期:2019年7月10日(水)まで

クリムト展~ウィーンと日本 1990


トルコ至宝展~チューリップの宮殿 トプカプの美

2019-04-28
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トルコ至宝展「チューリップの宮殿 トプカプの美」を乃木坂の国立新美術館にて観覧してきました。

「トロヤの最下層にはアトランティスが眠っている」
そんな夢物語のような伝説もあるほどのこの地域。

古くからアジアとヨーロッパを結ぶ交易の要地として
様々な国々の文化を柔軟に受け入れ融合することで
多様に育まれ、そして繰り返し支配者を変えながら
その文化と歴史を重層的に積み重ねてきたのだろう。

「至宝」と題されていたが、今回は装身具ではなく
六角形にカットされた大きなエメラルドを3つ配した
全長43cm程もある王座用の吊るし飾りのような
装身具の方にフォーカスされているようでした。

この射手用ながらも宝石が豊富に鏤められた指輪や
手鏡、短剣などに施されたマルチカラーの配色は
ここ数年の課題でもあり、古のセンスを焼きつけた。

こちらは、立法者スルタン・スレイマン1世の刀剣で
細密な意匠と彫金技術はアフメト・テケリュの作。

よくよく見てみると蛇と鳳凰が向かい合っており
黒い蛇は金色の唐草を纏うかのように絡めている。

そして最も時間を費やしてしまったのが
様々な装飾に描かれたチューリップの意匠だ。

チューリップはトルコ語でLale(ラーレ)
アルファベット「Lam Elif Lam He」で表され
それは順番こそ異なるもののイスラム教の神
アッラー「Elif Lam Lam He」と同じである事、
更にチューリップが1つの球根から1つの花を咲かせる
…そんな唯一性がイスラム教の一神教に通じる事から
トルコでは神が姿を変えて現れた象徴と暗示されてきた。

現代の日本人には少々馴染みが薄い
細身で、朝顔の蕾のように捻じれた
チューリップが当時は流行したようだが
やはり気になったのは…
・兜の彫金テクスチャ(34)
・釉下彩技法のタイル(68)
・壁用カーテンの刺繍(94)
・クッションカバーの刺繍(124,127)
辺りの、細身で下半分に向かって膨らみのある意匠に惹かれ
これらは他人様の邪魔にならぬようスケッチしてきたので
近い将来これらのオマージュを作品に昇華出来ればと思います。

~・~・~・~・~・~・~・

会場:国立新美術館(企画展示室2E)
会期:令和(2019)年5月20日(月) まで

トルコ文化年2019
トルコ至宝展~チューリップの宮殿 トプカプの美


くりから工房2019年~亥年「お猪坊」扇蔵様仕様

2019-01-01
くりから工房2019年~亥年「お猪坊」扇蔵様仕様 はコメントを受け付けていません

あけましておめでとうございます。

亥年の今年は「お猪坊」をリリースします。

先ずは年始の御挨拶代わりに
扇蔵様の御誂品をご紹介致します。

お猪坊の由来は「おちょぼ口の瓜坊」。

気持ちよさそうな表情で日を浴びる
瓜坊の姿を想作致しました。

慶事・吉祥の瑞祥「松・竹・梅」を
扇状にデザインして配されています。

扇蔵コレクション~扇印の十二支シリーズ
お猪坊(帯留・根付)を追加致しました。

~・~・~・~・~

今年も2014年から初詣に参拝している
柴田是真の額面著色鬼女図を所蔵の
王子稲荷神社へ初詣に行って参りました。

畏敬のオーラを放つ鬼女の大絵馬の拝観は
すっかり年始の恒例行事となりました。

おみくじは昨年と同じく半吉。

 この家の繁栄を祈るのは
 津の国の住吉の松原の様に
 常緑を色の変わりなく繁り行くが如く
 気を長く末の繁盛を待つべしとなり。

「気長に待つ」…ですか。

今までに無いスタンスだけに
心当たりにしておこうと思います。

~亥の字が含まれた「刻励」~
昨年末から仕事場の環境も少々改まり
より集中し、充実して励んで参ります。

2019年も、くりから工房を宜しくお願い致します。


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